『マタギ 矛盾なき労働と食文化』田中康弘著

マタギ=熊を専門に負う猟師、という先入観をもっていたが、本書を読みマタギが熊だけでなく山や自然全体を猟の対象にしていることを知る。ウサギ、川魚、キノコ、山菜、自然から命をいただき、生きる。これらを熟知し実践している集団がマタギなのである。

本書ではマタギが熊を解体する様子が詳しく掲載されている。怖い、気持ち悪いという印象を持たれる方もおられるだろうが、私にはそれらの営みがとても神々しく見えた。実際、獲物に感謝を捧げ、余すところなく「いただく」ことは、何よりも尊い行いなのである。それに比べ、食べ物を粗末にしがちな我々の、いかに愚かなことか。

失われつつあるマタギの営みから、食や命の意味を感じる。日本人の深い部分に触れたような、そんな読後感を抱いた一冊だった。


『マタギ 矛盾なき労働と食文化』田中康弘著 2009年 枻出版社
 目次
序章 マタギとの邂逅
第1章 熊のけぼかい、熊の味
第2章 雪山のウサギ狩り
第3章 冬の川で猟をするマタギ
第4章 マタギと渓流と岩魚釣り
第5章 マタギの山の茸
第6章 山奥に天然舞茸を負う
第7章 西根師匠の遺したもの
第8章 マタギとともに熊狩りへ
第9章 マタギとは何者か
終章 マタギの向かう先
あとがき