「 Book 」一覧

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大岡昇平『野火』新潮文庫

フィリピンにおいて敗走を続ける日本兵。疲労と飢えの中、極限状態における人肉食への誘惑と葛藤が描かれる。人肉食という極めて衝撃的な出来事にも関わらず、全体を通じて一歩引いたような無感情な淡々とした空気が流れている。不思議な感覚。 読みが浅いと言われればそれまでながら、人肉食という部分だけがとかく注目されがちな本作、実はもっと違うことを伝えたかったのではないか、と感じるくらい、人肉食との葛藤の部...

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浅田次郎『鉄道員』集英社文庫

かなり前に映画を見ていて、このたび原作を読み、映画が原作をしっかりと活かしたものだったのだなぁと感じた次第。原作を読んで映画を見た人はまったく違う感想なのだろうけど。 乙松さんの仕事観は、今の時代ではまったく通用しないだろうけど、それでも胸打たれるものがあったのは間違いなく、そうした感傷に浸れるぎりぎりの世代にいたことが嬉しくも悲しいところです。 「鉄道員」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈に...

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梅田望夫(2006)『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』ちくま新書

初版から10年以上経過してもなお陳腐化しておらず刺激を受けるところが多かったです。 以下、印象に残った点。 「日本の場合、インフラは世界一になったが、インターネットは善悪でいえば「悪」、清濁では「濁」、可能性よりは危険の方にばかり目を向ける。良くも悪くもネットをネットたらしめている「開放性」を著しく限定する形で、リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする」(p.21) 著者が米国との...

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遠藤周作『沈黙』新潮文庫

弾圧や迫害に際しても神はただひたすら沈黙する。この神の沈黙が、信徒の信仰心を試す物差しであるならば、神というのは何と無慈悲なものなのか。主人公ロドリゴの葛藤に共感を覚える作品。 ロドリゴの師フェレイラ曰く、 「日本人は人間とは全く隔絶した神を考える能力をもっていない。日本人は人間を超えた存在を考える力を持っていない」 (略) 「日本人は人間を美化したり拡張したものを神とよぶ。...

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司馬遼太郎『空海の風景』中公文庫

再読了。時機を読み、時機を逃さず、時機を得、時機を活かした天才、空海。そんな印象。何度読んでも面白い。 中公文庫>空海の風景(上)(2017-06-15(Thu) 23:00:19 アクセス) 中公文庫>空海の風景(下)(2017-06-15(Thu) 23:00:25 アクセス)

山口博(1979)『Ora et Labora』弘告社

山口博(1979)『Ora et Labora』弘告社

トラピスト修道院の貴重な写真集です。修道院の売店で購入しました。 "Ora et Labora"、祈れ働け。この言葉どおり、厳かで規律的な修道院での日々の祈りと生活の様子が伝わってきます。 1979年、昭和54年の発行。今から約40年前の修道院の様子です。数年前に中をご案内いただいた際の印象とほとんど変わっていないことから、日々の手入れが行き届いていることを実感します。

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渡部昇一(1976)『知的生活の方法』講談社現代新書

訃報を知り、20年ぶり(?)に再読。カントの生活、朝型夜型と血圧、このあたりが初読時の印象として残っていたが、今回は「何度も繰り返し読め」という部分に反応。最近、時間の有限性に実感を伴ってきたので、あれこれ手を出すよりも、もう少し自分の関心事に的を絞るのが良いのかも、などと。

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深沢七郎(1964)『楢山節考』新潮文庫

深沢七郎の代表作。いわゆる姥捨て山の話だが、自ら山に入ることを望む主人公おりんの視点で書かれている。生きたまま山に入るというのは相当な悲劇なのに、おりんの姿や言動には悲壮感がまったくなく、むしろ生き生きとしながら山に向かっていく。これが逆に生々しい。まさに名作。 新潮社>『楢山節考』2017-05-08(Mon) 20:33:40 アクセス

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深沢七郎(1982)『みちのくの人形たち』中公文庫

「楢山節考」で知られる深沢七郎、後期の代表作。 間引きの風習を題材とした「みちのくの人形たち」は、何とも後味の悪い印象。後味が悪い分、いつまでも生温かい情景が頭に残る、そんな作品です。 フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』の間引きの記述と関連して、より一層生々しく感じられました。 目次 みちのくの人形たち 秘戯 アラビア狂想曲 をんな曼陀羅 『破れ草紙』に拠るレポート 和人のユーカ...

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ルイス・フロイス著(1991)『ヨーロッパ文化と日本文化』岩波文庫

原題は、『日欧文化比較』。イエズス会の宣教師ルイス・フロイスが、天正13(1585)年に加津佐でまとめたもの。安土・桃山時代の日本の生活や文化を知るための貴重な史料となっています。 特に印象的だった点をいくつか。 ヨーロッパでは嬰児が生まれてから殺されるということは滅多に、というよりほとんど全くない。日本の女性は、育てていくことができないと思うと、みんな喉の上に足をのせて殺してしまう...