罹災児童の感想文(原文の儘)
◎ソノ夜
住吉尋常小学校一年 萩原 精治
三月二十一日ハ、ヒドイカゼノヒデシタ。バンゴハンヲタベテ、ネヤウトシマスト、ジドウシャポンプガトンデユキマシタ。ヒトガハシツテユキマス。
「ニゲナサイ」トカアサンガイヒマシタノデ、ボクハ五ネンノ、ニイサントニゲマシタ。ボクハカゼデコロビマシタ。ニイサンガオコシテクレマシタ。
ヒノコヲカブツテ、カゼニトバサレナガラ、ハシリマシタ、ヤウヤクバアヤサンノウチニツキマシタ。ソノウチニ、セガハサンガキマシタノデ、ボクハオンブシテマタニゲマシタ。ウシロヲミルト、ソラハマツカデヒノコガバラバラトンデキマス。ボクハオツカナクテ、セガハサンニツカマリマシタ。
ダイモンヲトホツテ、ナカノハシヘニゲマシタ。ボクハシラナイウチヘトメテモラヒマシタ。
メガサメルト、セウボウノヒトガキテ「クワジハキエマシタヨ」トイツタノデ、ボクハアンシンシマシタ。
セガハサンガ、カアサンタケヲサガシテクレタノデ、ヨガアケテカラ、ニイサント、三ニンデス、スヰヒロチヨウノニヤマノウチニユキマシタ。
トヨチヤンガ、シンダトイツタノデ、ボクタチハナキマシタ。
ピアノモヤケタノデ、ボクハガツカリシマシタ。ランドセルモ、ガツコウモヤケテシマヒマシタ。
(漢字交じり文)
三月二十一日は、ひどい風の日でした。晩御飯を食べて、寝ようとしますと、自動車ポンプが飛んでゆきました。人が走ってゆきます。
「逃げなさい」と母さんが言いましたので、僕は五年の、兄さんと逃げました。僕は風で転びました。兄さんが起こしてくれました。
火の粉をかぶって、風に飛ばされながら、走りました。ようやく婆やさんの家に着きました。その家に、瀬川さんが来ましたので、僕はおんぶしてまた逃げました。後ろを見ると、空は真っ赤で火の粉がばらばら飛んで来ます。僕はおっかなくて、瀬川さんにつかまりました。
大門を通って、中の橋へ逃げました。僕は知らない家へ泊めてもらいました。
目が覚めると、消防の人が来て「火事は消えましたよ」と言ったので、僕は安心しました。
瀬川さんが、母さんだけを探してくれたので、夜が明けてから、兄さんと、三人です、末広町のニヤマの家に行きました。
父ちゃんが、死んだと言ったので、僕たちは泣きました。
ピアノも焼けたので、僕はがっかりしました。ランドセルも、学校も焼けてしまいました。


