『日本文化史 第二版』家永三郎著

『日本文化史』

日本の「文化」(本書では、「学問や芸術や宗教や思想・道徳などの領域を指す」狭義の「文化」)の歴史を概観した一冊。コンパクトながら日本史全体を俯瞰できる教科書的内容となっている。

初版は1959年(昭和34年)であり、第二版の出版は1981年(昭和56年)。初版から第二版までの間に22年、第二版から今日まで33年の経過がある。おそらく日本史研究の進展によりいささか古い記述もあるのだろうが、最新の状況については日本史教科書等により把握したうえで、本書により文化史の全体像を捉えるという使い方をするうえで、未だ他にかわる書物は少ないだろう。

文化史概説というテーマながら、所々に著者の歴史観が織り込まれている。特に、「歴史の進展というものは、政治権力の交代という形であらわれるときに、もっともはっきりしたすがたを示すのである。それに先だって、社会のもっと底のほうで歴史をおしすすめる力が徐々に蓄積され、だんだんそれが上の方に昇ってきて、ついに政治権力を変革するまでになる、という順序をとるのがふつうである。そして、いちばん歴史の奥底で歴史を推進する原動力となるものが、常に生産力をになう勤労民衆であるということは、今日ではもう常識といってよいであろう。」(p.113)という一節は、今の世に照らし合わせて見ても、その鋭い洞察に驚かされ、深く印象に残った。

『日本文化史 第二版』家永三郎著 岩波新書 1982年

目次
第二版はしがき
初版はしがき
はじめに—日本文化史の課題
1 原始社会の文化
 ・歴史の出発点
 ・原始社会とはどういう時代か
 ・縄文土器
 ・生産力の停滞
 ・呪術の支配
2 古代社会初期の文化
 ・金属文化の渡来
 ・階級と国家の成立
 ・君主制国家の形成
 ・民族宗教としての祭り
 ・『古事記』『日本書紀』の伝える物語
 ・古代文化と性
 ・日常生活
 ・造形美術
3 律令社会の文化
 ・律令機構の成立
 ・大陸精神文化の輸入
 ・飛鳥・白鳳・天平の仏教芸術
 ・伝統的芸術の新しい展望
 ・平安初期の文化
4 貴族社会の文化
 ・貴族社会の特色
 ・物語文芸の発達
 ・絵巻物の発達
 ・貴族文化の地方と海外への進出
 ・都会と農村の生活文化
5 封建社会成長期の文化
 ・武士の勃興とその歴史的意義
 ・武者の習の成立とその文芸的把握
 ・新仏教の成立
 ・理論的な著作の出現
 ・貴族文化の伝統
 ・荘園体制の解体と古代勢力の滅亡
 ・文化の下克上
 ・宗教の世俗化による新しい文化の発達
 ・室町時代の日常生活
6 封建社会確立期の文化
 ・武将と豪商の美術
 ・西洋文化との最初の接触
 ・封建秩序の固定と儒教道徳の思想界制覇
 ・学問の興隆と教育の普及
 ・町人芸術の発達
 ・元禄時代町人文化の特色
7 封建社会解体期の文化
 ・封建秩序の傾斜と町人芸術の爛熟
 ・科学的精神の誕生
 ・革新的な社会思想の展開
 ・文化の地域的および社会的な拡がり
日本文化史略年表・索引