板坂元(1973)『考える技術・書く技術』講談社現代新書

読書法や発想法、論理の組み立て方などを示す名著。著者の個人的な好みやテクニックが披露されていることや、例文、例え話の類いが面白いということが、名著とされる所以であると思料。

黄色のダーマト、持ち出しフォルダ、インク鉛筆といった文具の話題が大変参考になった。

本題とは関係ないが、以下の一節に反応したのご紹介したい。

近代社会は、人間をブロイラー・チキンのように働かせる仕組みになりかけている。こういう体制の中では、お尻の毛までむしりとられないようにするために、自分の生活を守ることは大切なことだ。けれども、途中で仕事をおっぽりだして帰るような連中は、不思議と自分の生活そのものも、ブロイラーのにわとりのようになっていることが多い。何でもよい、どこでもよい、好奇心を燃やし情熱と忍耐力で、そして銭金ぬきで対象に立ちむかうことが、新しいものを生みだすものであることを忘れるべきではない。そうすることこそがブロイラー・チキンにならない道なのだ。(p.206)

この考え方、共感する部分もあるけど、これを他人に強要した結果が、本書出版から30年後の今日の異常な働き方、働かせ方であるように思える。むしろ「好奇心を燃やし情熱と忍耐力で、そして銭金ぬきで」向き合う対象があるならば、「途中で仕事をおっぽりだして」でも帰るべきである。

本書に登場する面白そうな本のリスト

  • オズボーン・上野一郎訳『独創力を伸ばせ』ダイヤモンド社
  • 長尾みのる『ヒトの目をひく法—視覚のポイント集』文化出版局
  • 篠田統・長崎多美子『家政学序説』化学同人
  • 篠田統『すしの本』柴田書店
  • 篠田統『米の文化史』社会思想社
  • 中尾佐助『料理の起源』NHKブックス
  • 中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』岩波新書
  • 河野友美『味のからくり』光生館
  • 河野友美『台所の理学』光生館
  • 本多勝一『殺される側の論理』朝日新聞社
  • 深沢七郎『盲滅法』創樹社
  • 板坂元『日本人の論理構造』講談社現代新書
  • 森秀人・上田敏晶『読書啓発』実務教育出版
  • 見田宗介「ベストセラーの戦後日本史」『現代日本の精神構造』p.72-85弘文堂
  • 桑原武夫『「宮本武蔵」と日本人』講談社現代新書
  • エドワード・デボノ『水平思考の世界』
  • 芥川龍之介『侏儒の言葉』
  • 丸山真男『日本の思想』岩波新書
  • 森政弘・片山竜二『続・やわらかい頭』時事通信社
  • 川端康成『千羽鶴』
  • 川喜田二郎・牧島信一『問題解決学—KJ法ワークブック』講談社
  • E・ホイラー・根本吉郎訳『行動的考え方の力』ダイヤモンド社
  • 中山正和『創造思考の技術』講談社現代新書
  • 川喜田二郎『雲と水と—移動大学奮戦記』講談社
  • スタンダール『赤と黒』
  • 坂口謹一郎『世界の酒』岩波新書
  • 坂口謹一郎『日本の酒』岩波新書
  • 清水幾太郎『論文の書き方』岩波新書
  • 川喜田二郎『発想法』中公新書
  • 川喜田二郎『続・発想法』中公新書
  • 梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書
  • 思想の科学研究会編『夢とおもかげ—大衆娯楽の研究』中央公論社
  • セオドール・ソレンセン『ケネディ』(邦訳『ケネディの道』)弘文堂
  • 関計夫『適応と意味論』
  • 板坂元『ああアメリカ』講談社現代新書
  • レヴィ・ストロース『悲しき南回帰線』講談社文庫
  • 日本能率協会編『経営のためのKJ法入門』日本能率協会
  • 加藤昭吉『計画の科学』講談社
  • 中根千枝『タテ社会の人間関係』講談社現代新書
  • 加藤秀俊『自己表現』中公新書
  • 山口瞳『江分利満氏の華麗な生活』新潮文庫
  • フレーザー『金枝篇』
  • マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』
  • 森鷗外訳『即興詩人』
  • 夏目漱石『草枕』
  • トルストイ『復活』
  • ヘミングウェー『武器よさらば』
  • 司馬遼太郎対談集『日本人を考える』文藝春秋
  • 清水孝之『蕪村の芸術』至文堂
  • 大江健三郎『みずから我が涙をぬぐいたまう日』講談社
  • 五木寛之『ゴキブリの歌』毎日新聞社
  • 三宅正太郎『作家の裏窓』北辰堂
  • ハンリー・ノリンズ『ザ・コンプリート・コピーライター』
  • 亀井一綱『経営とコミュニケーション』日本経済新聞社
  • マルクス『資本論』
  • シュリーマン『古代への情熱』岩波文庫
  • 今西錦司『山と探検』文藝春秋
  • クリスチナ・ミルナー『ブラック・プレイヤーズ』

目次

  1. 頭のウォームアップ
    1. 脳のはたらき
    2. 頭を刺戟する
    3. 法則性の発見
    4. 関連づけ
  2. 視点
    1. 自分の型を知る
    2. 視点をかえる
  3. 読書
    1. 反読書的読書法
    2. 頭をほぐす読書
    3. 精読の工夫
    4. 英語を読む
  4. 整理
    1. カード・システム
    2. p文房具
    3. 資料の保存
  5. 発想
    1. 醗酵させる知恵
    2. バンカラのすすめ
  6. 説得
    1. 情動にうったえる
    2. 読み手を味方にする
    3. 信頼を生む技術
    4. 文章のリズム
  7. 仕上げ
    1. 型の組立て
    2. 構成の技術
    3. 短文主義
    4. 簡潔さ・わかりやすさ
  8. まとめ
    1. 誠実であること
    2. 情熱と忍耐
  9. あとがき