Book一覧

月村了衛『機龍警察[完全版]』早川書房

超一流の傭兵と謎多き最新マシーン「龍機兵」を擁する警視庁特捜部。身内からも敵視される特捜部が、機甲兵装による大規模テロ犯罪に立ち向かいじりじりと真相に迫る。圧倒的なパワーをもつ機甲兵装の戦いと警察内部の醗酵しつくしたねちねちとした人間ドラマ、相反する軸が絡み合った名作です。

小学生の頃からパトレイバーを愛してやまない私にとって久々のロボットもの。よろしくないとは思いつつ、どうしても各キャラをパトレイバーのキャラと重ねてしまいます。沖津と後藤とか…


今井照(2017)『地方自治講義』ちくま新書

ざっくりとまとめ

  • 主題
    • 「地方自治」の概念が人によって異なっていて、「地方自治」を進めているつもりが、実は中央集権化を進めることになってしまい、地域が弱体化してしまう。そういう事態を防ぐためにも、「地方自治」の基礎概念や歴史を知ることが重要。
  • 第1講 自治体には三つの顔がある

    「1 土地の区分としての自治体
    2 地域社会としての自治体
    3 地域の政治・行政組織としての自治体」(p.14)

    • 本書における「自治体」は、主として3。
  • 第2講 地方自治の原理と歴史
    • 地方自治の原理は、補完性原理。
    • 個人で解決できない問題を地域で、地域で解決できない問題を自治体で、自治体で解決できない問題を都道府県で、都道府県で解決できない問題を国で、というように補完する。これが基本的な考え方。
    • 平成の大合併に至るまで、分権の名のもとに少しずつ中央集権的になってきている。
  • 第3講 公共政策と行政改革

    「政策のなかでも社会問題の解決に関わる政策を公共政策と呼び、公共政策の中でも国や自治体などの政府が担うものを政府政策と言います」(p.103)

    • 行政改革として公務員が現象する一方、委託等で公務をになう民間人(「公務員もどき」)が増加。
  • 第4講 地域社会と市民参加
    • 地縁団体を万能とみるのは誤り。
    • 制度化された議会という仕組みをもっと活かすべき。
  • 第5講 憲法と地方自治
    • 「地方自治の本旨」という言葉の定義が不明確。
    • 不明確だから不適当とするのではなく、定義を新たに作り上げていくことが可能である、と捉えるべき。
  • 第6講 縮小社会の中の自治体
    • 人口減少下においても守るべき自治体の役割があるはず。
    • ときに政策的に勝負に出る場面はあるにしても、その勝負の結果、住民に致命的なダメージを与えるものであってはならない。

目次

  • はじめに
  • 第1講 自治体には三つの顔がある
    • 1 自治体のアクター(登場人物)
    • 2 住民と市民
    • 3 二元的代表制
  • 第2講 地方自治の原理と歴史
    • 1 自治体の考え方
    • 2 自治体の歴史
    • 3 文献改革と平成の大合併
  • 第3講 公共政策と行政改革
    • 1 自治体の公共政策
    • 2 自治体財政の基礎
    • 3 公務員
  • 第4講 地域社会と市民参加
    • 1 コミュニティ
    • 2 市民合意
    • 3 市民参加
  • 第5講 憲法と地方自治
    • 1 主語は誰か
    • 2 地方自治の本旨
    • 3 欺きの話法
  • 第6講 縮小社会の中の自治体
    • 1 人口減少の要因
    • 2 東京圏人工の固定化
    • 3 拡散政策が導く一極集中
  • おわりに
  • 参照文献

大岡昇平『野火』新潮文庫

フィリピンにおいて敗走を続ける日本兵。疲労と飢えの中、極限状態における人肉食への誘惑と葛藤が描かれる。人肉食という極めて衝撃的な出来事にも関わらず、全体を通じて一歩引いたような無感情な淡々とした空気が流れている。不思議な感覚。

読みが浅いと言われればそれまでながら、人肉食という部分だけがとかく注目されがちな本作、実はもっと違うことを伝えたかったのではないか、と感じるくらい、人肉食との葛藤の部分はごく一部で、戦地において病を持った兵士の扱われ方、兵士の命の扱われ方、戦地での人の命などが主題なのではなかったかと朧気に感じた次第。

とかく普遍と思われる命の重さが、時代、場所、状況等による相対的なものであることをあらためて実感させられた。


浅田次郎『鉄道員』集英社文庫

かなり前に映画を見ていて、このたび原作を読み、映画が原作をしっかりと活かしたものだったのだなぁと感じた次第。原作を読んで映画を見た人はまったく違う感想なのだろうけど。

乙松さんの仕事観は、今の時代ではまったく通用しないだろうけど、それでも胸打たれるものがあったのは間違いなく、そうした感傷に浸れるぎりぎりの世代にいたことが嬉しくも悲しいところです。

「鉄道員」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の8作を収めた一冊です。


梅田望夫(2006)『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』ちくま新書

初版から10年以上経過してもなお陳腐化しておらず刺激を受けるところが多かったです。

以下、印象に残った点。

「日本の場合、インフラは世界一になったが、インターネットは善悪でいえば「悪」、清濁では「濁」、可能性よりは危険の方にばかり目を向ける。良くも悪くもネットをネットたらしめている「開放性」を著しく限定する形で、リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする」(p.21)

著者が米国との比較で述べたもの。この傾向は、(少しはましになっただろうが)今でもさほど変わらず。

 

(Google内のアイデアマンの評価について)

「アイデアの起案自身と言うのはほとんど評価されない。アイデアっていうのは当然、難しい問題を含むものだ。その問題を解決して、動く形にして初めて評価される。口だけの人はダメだな」(p.87-88)

「あれは俺の発案なんだ」とか言いそうな「いっちょかみ」な人がだめなのは日本でも同じ。

「半導体に飛びついて電子立国・日本を達成し、PCにも飛びつき巨大なPC関連産業を日本にもたらしたのに、なぜインターネットには飛びつけなかったのか?」(p.92)

具体的な物には強い日本。物の見えないインターネットは不向き、ということか。いずれインターネットの向こう側にも日本初の巨大世界がつくられることを期待。

「全く新しい事象を前にして、いくつになっても前向きにそれを面白がり、積極的に未来志向で考え、何か挑戦したいと思う若い世代を明るく励ます。それがシリコンバレーの「大人の流儀」たるオプティミズムである。」(p.246)

ITに限らずあらゆる分野で求められる姿勢。特に日本の地域、特に高齢者にはこういう姿勢が重要なのでは。

 

目次

  • 序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
  • 第1章 「革命」であることの真の意味
  • 第2章 グーグル―知の世界を再編成する
  • 第3章 ロングテールとWeb2.0
  • 第4章 ブログと総表現社会
  • 第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
  • 第6章 ウェブ進化は世代交代によって
  • 終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
  • 初出について
  • あとがき

 

 


遠藤周作『沈黙』新潮文庫

弾圧や迫害に際しても神はただひたすら沈黙する。この神の沈黙が、信徒の信仰心を試す物差しであるならば、神というのは何と無慈悲なものなのか。主人公ロドリゴの葛藤に共感を覚える作品。

ロドリゴの師フェレイラ曰く、

「日本人は人間とは全く隔絶した神を考える能力をもっていない。日本人は人間を超えた存在を考える力を持っていない」
(略)
「日本人は人間を美化したり拡張したものを神とよぶ。人間と同じ存在をもつものを神とよぶ。だがそれは教会の神ではない」
(略)
「私にはだから、布教の意味はなくなっていった。たずさえてきた苗はこの日本とよぶ沼地でいつの間にか音も腐っていった。私はながい間、それに気づきもせず知りもしなかった」

古代律令制度も中国から輸入したものを自分たちに合うように変質させた日本。仏教だって同じ。いはんやキリスト教をや。フェレイラに「沼地」と代弁させた性質こそ、まさに日本文化の本質なのではないかと強く感じた次第です。

本の概要は、新潮社のページが参考となります。

新潮社>神様って、いないんじゃない? という疑問を、ここまで考えぬいた人達がいる。(2017-07-08(Sat) 23:05:16アクセス)

マーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙―サイレンス―」、ブルーレイで出るみたいです。


司馬遼太郎『空海の風景』中公文庫


再読了。時機を読み、時機を逃さず、時機を得、時機を活かした天才、空海。そんな印象。何度読んでも面白い。


山口博(1979)『Ora et Labora』弘告社

山口博(1979)『Ora et Labora』弘告社

トラピスト修道院の貴重な写真集です。修道院の売店で購入しました。

“Ora et Labora”、祈れ働け。この言葉どおり、厳かで規律的な修道院での日々の祈りと生活の様子が伝わってきます。

1979年、昭和54年の発行。今から約40年前の修道院の様子です。数年前に中をご案内いただいた際の印象とほとんど変わっていないことから、日々の手入れが行き届いていることを実感します。


渡部昇一(1976)『知的生活の方法』講談社現代新書

訃報を知り、20年ぶり(?)に再読。カントの生活、朝型夜型と血圧、このあたりが初読時の印象として残っていたが、今回は「何度も繰り返し読め」という部分に反応。最近、時間の有限性に実感を伴ってきたので、あれこれ手を出すよりも、もう少し自分の関心事に的を絞るのが良いのかも、などと。


深沢七郎(1964)『楢山節考』新潮文庫

深沢七郎の代表作。いわゆる姥捨て山の話だが、自ら山に入ることを望む主人公おりんの視点で書かれている。生きたまま山に入るというのは相当な悲劇なのに、おりんの姿や言動には悲壮感がまったくなく、むしろ生き生きとしながら山に向かっていく。これが逆に生々しい。まさに名作。


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