Book一覧

深沢七郎(1982)『みちのくの人形たち』中公文庫

「楢山節考」で知られる深沢七郎、後期の代表作。

間引きの風習を題材とした「みちのくの人形たち」は、何とも後味の悪い印象。後味が悪い分、いつまでも生温かい情景が頭に残る、そんな作品です。

フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』の間引きの記述と関連して、より一層生々しく感じられました。

目次

  • みちのくの人形たち
  • 秘戯
  • アラビア狂想曲
  • をんな曼陀羅
  • 『破れ草紙』に拠るレポート
  • 和人のユーカラ
  • いろひめの水
  • 解説 荒川洋治

ルイス・フロイス著(1991)『ヨーロッパ文化と日本文化』岩波文庫

原題は、『日欧文化比較』。イエズス会の宣教師ルイス・フロイスが、天正13(1585)年に加津佐でまとめたもの。安土・桃山時代の日本の生活や文化を知るための貴重な史料となっています。

特に印象的だった点をいくつか。

ヨーロッパでは嬰児が生まれてから殺されるということは滅多に、というよりほとんど全くない。日本の女性は、育てていくことができないと思うと、みんな喉の上に足をのせて殺してしまう。(p.51)

衝撃。命の重さすら絶対的ではなく相対的なものなのか。堕胎についても「日本ではきわめて普通」との記載あり。

われわれの子供は大抵公開の演劇や演技の中でははにかむ。日本の子供は恥ずかしがらず、のびのびしていて、愛嬌がある。そして演ずるところは実に堂々としている。(p.66)

今だと逆の評価では? 日本人の子供は恥ずかしがり屋でもじもじ、一方、欧米の子供は実に堂々と自己主張する、といった風に。(注に、「武士の子弟の演ずる舞や能などを指すものと思われる」とあり。)

われわれの間では酒を飲んで前後不覚に陥ることは大きな恥辱であり、不名誉である。日本ではそれを誇りとして語り、「殿 Tono はいかがなされた。」と尋ねると、「酔払ったのだ。」と答える。(p.101)

その他、当時、ヨーロッパの風習と比較してフロイスが異様に感じた日本の文化ですが、今の日本と比べてみて異様に感じることや、昔から変わらないこと等に気付かされます。

目次

  • 解題
  • 第1章 男性の風貌と衣服に関すること
  • 第2章 女性とその風貌、風習について
  • 第3章 児童およびその風俗について
  • 第4章 坊主ならびにその風習に関すること
  • 第5章 寺院、聖像およびその宗教の信仰に関すること
  • 第6章 日本人の食事と飲酒の仕方
  • 第7章 日本人の攻撃用および防禦武器について―付戦争
  • 第8章 馬に関すること
  • 第9章 病気、医者および薬について
  • 第10章 日本人の書法、その書物、紙、インクおよび手紙について
  • 第11章 家屋、建築、庭園および果実について
  • 第12章 船とその慣習、道具について
  • 第13章 日本の劇、喜劇、舞踊、歌および楽器について
  • 第14章 前記の章でよくまとめられなかった異風で、特殊な事どもについて
  • あとがき
  • 岩波文庫あとがき(高瀬弘一郎)

宮本常一(1984)『忘れられた日本人』岩波文庫(青164-1)

著者が各地の農山漁村の老人から聴き取りしたそれぞれの地域の生活や文化の記録。
地域に暮らした普通の老人の話なのでとても生々しくダイナミックな歴史・文化に感じました。

特に男女関係の記載についてはあまりにも現在の感覚と違っていてとても興味深かったです。
司馬遼太郎の小説にも同じような場面が出てきていたのを思い出しましたが、こういう風習というか文化はおそらく本書に登場した地域に限定されるものではなくて、広い地域で行われていたのではないかと思います。

目次

  • 凡例
  • 対馬にて
  • 村の寄りあい
  • 名倉談義
  • 子供をさがす
  • 女の世間
  • 土佐源氏
  • 土佐寺川夜話
  • 梶田富五郎翁
  • 私の祖父
  • 世間師(一)
  • 世間師(二)
  • 文字をもつ伝承者(一)
  • 文字をもつ伝承者(二)
  • あとがき
  • 注(田村善次郎)
  • 解説(網野善彦)

高橋崇(1991)『蝦夷の末裔 前九年・後三年の役の実像』中公新書

前九年の役にて陸奥の安倍氏、後三年の役にて出羽の清原氏がそれぞれ滅ぶ。史料が少なく両氏の興隆の歴史に注目した研究は非常に少ない。こうした著者の問題意識に基づき、限られた史料を徹底的に精査することで、両氏の「興」と「亡」を改めて見直した一冊。

目次

  • はじめに
  • 第1章 平安時代の東北史<その1>
  • 第2章 六郡支配への道程<安倍氏の場合>
  • 第3章 山北支配への道程<清原氏の場合>
  • 第4章 前九年の役を考える
  • 第5章 平安時代の東北史<その2>
  • 第6章 後三年の役を考える
  • おわりに

 


網野善彦(2012)『歴史を考えるヒント』新潮文庫

本書は、「歴史の中の言葉」というテーマで開かれた連続講座の内容をまとめたものであり、「日本」や「百姓」、様々な商業用語、「自由」などを取り上げ、「歴史を考えるヒント」も「言葉」の中にある、というのが主題となっています。
「それが使われていたときの言葉の意味を正確にとらえながら中世の文書を読み解いていくと、予期しない世界が開けてくることがあるわけで、そこに「歴史」という学問の面白味があるとも言えるとお思います。」(p.195) との筆者のコメントがまさに本書のテーマを一言で表しているように感じました。

目次

  • 1 「日本」という国名
  • 2 列島の多様な地域
  • 3 地域名の誕生
  • 4 「普通の人々」の呼称
  • 5 誤解された「百姓」
  • 6 不自由民と職能民
  • 7 被差別民の呼称
  • 8 商業用語について
  • 9 日常用語の中から
  • 10 あとがき
  • 解説 與那覇潤

 


荒井良(1976)『胎児の環境としての母体—幼い生命のために—』岩波新書

胎児に何よりも大きな影響を与える母体の健康を主題に、出産に至る各段階において体内で何が起こっているのか、また、胎児・新生児の体内で何が起こっているのかをわかりやすく解説した一冊。

 

 





工藤雅樹(2001)『蝦夷の古代史』平凡社新書

「縄文」「蝦夷」「アイヌ」。言葉の定義として整理し、理解することが重要ながら、相当に難しい。実際には、これらは区分けできるものではなく、ゆっくりと溶け込むようにして今に至っている、そんなふうに感じました。

目次

  • はじめに
  • 第1部 古代蝦夷の諸段階
    • 第1章 古代蝦夷の諸段階
    • 第2章 東国人としての「エミシ」—第1段階
    • 第3章 大和の支配の外にある者としての「エミシ」—第2段階
    • 第4章 大化の改新後の世界—第3段階
    • 第5章 平安時代の蝦夷—第4段階
  • 第2部 蝦夷はアイヌか日本人か
  • あとがき
  • 参考文献
  • 年表

 


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