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『死の壁』養老孟司著

養老孟司著『死の壁』

誰もが見て見ぬふりしている死の壁は、生まれたときから常にあり続けている。ずっとそこにあるのだから、見て見ぬふりするのでなく、あるのが普通なのだ、と捉えるべきではないか。

それにしても、昨年の自分と今の自分とでは、身体を構成する水分や細胞の99パーセント以上が別物になっているのには驚く。はたして、自分とは何ぞや。意識はどこにあるのか。そんなことを考え始めると死の壁以上に生の壁が迫ってきてしまう。

 

『死の壁』養老孟司著 新潮新書 2004年

目次

  • 序章 『バカの壁』の向こう側
  • 第1章 なぜ人を殺してはいけないのか
  • 第2章 不死の病
  • 第3章 生死の境目
  • 第4章 死体の人称
  • 第5章 死体は仲間はずれ
  • 第6章 脳死と村八分
  • 第7章 テロ・戦争・大学紛争
  • 第8章 安楽死とエリート
  • 終章 死と人事異動

 

参考:バカの壁 (新潮新書)


『里山ビジネス』玉村豊男著

 

『里山ビジネス』

長野県東御市で「ヴィラデスト」というカフェ、ワイナリー等を営む著者が、昔ながらの里山の暮らしに基づく「持続するビジネス」について語った一冊。

多くの人が、資本主義的な利益追求・拡大マインドの限界に気づき始めている(と小生は感じる)今、我々の暮らし、生活の根幹は「持続」させることであって「拡大」させることではない、という著者の主張には強く共感する。

必死にしがみつこうとしている又は取り返そうとしている栄光が、実は、本来の人間の営みからはかけ離れた中毒性の高い虚像なのではないか。

「額に汗して毎日こつこつと働き、働くことそのものによろこびを見出し、仕事が終わったら風呂に入ってああいい湯だと唸り、ワインの一杯も飲みながら愉快な食卓を囲んで大笑いする。」(p.180)

こんな生活が、決して単なる懐古ではなく、本質のような気がしてならない。

 

参考:ヴィラデスト ガーデンファームアンドワイナリー

 

『里山ビジネス』玉村豊男著(集英社新書 2008年)

目次

  • はじめに—眺めのよいワイナリーから—
  • 第1章 素人商売事始め
  • 第2章 ワイナリーを起業する
  • 第3章 里山のビジネスモデル
  • 第4章 拡大しないで持続する
  • 第5章 グローバル化は怖くない
  • あとがき—桑の木とブドウの木—

『武士の家計簿—「加賀藩御算用者」の幕末維新』

『武士の家計簿—「加賀藩御算用者」の幕末維新』

百万石と言われた加賀(金沢)藩の算盤係として会計処理を代々担ってきた猪山家が残した家計簿は、下級武士の日々の生活の実態を詳細に、かつ、生々しく伝えている。

武士と農民や商人との関係、親戚付き合いと金の貸し借り、嫁と嫁の実家との関係等々、著者によって繙かれた家計簿を通じて様々な姿が明らかにされており、私が漠然と想像していた武士像とはあまりにも差があり印象的だった。

 

『武士の家計簿—「加賀藩御算用者」の幕末維新』 磯田道史著 新潮新書 2003年

目次

  • はしがき 「金沢藩士猪山家文書」の発見
  • 第1章 加賀百万石の算盤係
  • 第2章 猪山家の経済状態
  • 第3章 武士の子ども時代
  • 第4章 葬儀、結婚、そして幕末の動乱へ
  • 第5章 文明開化のなかの「士族」
  • 第6章 猪山家の経済的選択
  • あとがき
  • 参考文献リスト

 


『コミュニティデザインの時代—自分たちで「まち」をつくる』

 

『コミュニティデザインの時代—自分たちで「まち」をつくる』

町内会から自治体まで「まち」が指す地域の幅はあるものの、自分たちの住む「まち」のあり方について、自分たち自身が深く関わらなければならない時代になってきた、という著者の主張に誤りはないと考える。とはいえ、これまで「まちづくり=行政の仕事」と把握されがちであり、どのように「まち」に関わるべきなのかはわかりにくい。

そこで鍵となるのが著者のような仕事なのだろう。「まち」への関わり方を地域の人々に違和感なく伝え、その地域がより良くなるための人々の関わり方を地域の人々を主役に据えたまま再構成する。こうしたコミュニティデザインについてより広く認知されるとともに、著者のようなスキルをもった人を増やすことがこれから一層求められているように感じた。

 

『コミュニティデザインの時代—自分たちで「まち」をつくる』山崎亮著 中公新書 2012年

目次

まえがき
第1章 なぜいま「コミュニティ」なのか

  1. 自由と安心のバランス
  2. まちが寂しくなった理由
  3. 「昔はよかった」のか
  4. 人口減少先進地に学ぶ
  5. ハード整備偏重時代の終焉
  6. まちに関わること
  7. パブリックとコミュニティ

第2章 つながりのデザイン

  1. 宣言について
  2. まちの豊かさとは何か
  3. コミュニティとデザインについて
  4. 肩書きについて
  5. ブライアン・オニールという人
  6. 変化するコミュニティデザイン

第3章 人が変わる、地域が変わる

  1. 人が育つ(中村さんの場合)
  2. コミュニティ活動に参加する意義(小田川さんの場合)
  3. チームについて
  4. 中山間離島地域に学ぶ
  5. 集落診断士と復興支援員

第4章 コミュニティデザインの方法

  1. コミュニティデザインの進め方
  2. ファシリテーションと事例について
  3. 地域との接し方
  4. 雰囲気について
  5. 資質について
  6. 教育について
  7. 行政職員との付き合い方
  8. コミュニティの自走

あとがき

 


『沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ』

 

『沸騰!図書館』

佐賀県武雄市の樋渡市長の著。市立図書館をTSUTAYAに指定管理させたことで、これまでまちづくりの中心とはなり得なかったはずの公共図書館をまちの拠点とした。

本書を読んで、利用者のニーズを踏まえた公共施設(ハコモノ)はまち自体を良い方向に大きく変えるエネルギーをもっているということを強く感じた次第。

p.72「批判が出たら失敗、批判が出ないようにしないと、なんて考え方はおかしいし大嫌い。そういう発想こそが創造力を阻害することになる。」という記述には深く共感。

 

 

目次

  • はじめに
  • 第1章 閉館図書館と呼ばれて
  • 第2章 TSUTAYAを口説く
  • 第3章 大荒れ議会と大荒れネット
  • 第4章 新図書館攻防戦、土壇場まで
  • 第5章 図書館に街が誕生した!
  • おわりに

 


石井光太著『遺体—震災、津波の果てに—』

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衝撃的だった。報道の向こう側にこうした現実があるだろうことは想像していたが、想像をはるかに超えていた。

淡々とした記載が、よけいに生々しく当時の張り詰めた空気を伝えてくる。

読中、何カ所も目頭の熱くなるのを抑えられない場面に出くわした。

今でもその余韻は続いている。

 

遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

 

参考

 

『遺体—震災、津波の果てに—』石井光太著 新潮文庫 2014年  目次

  • プロローグ 津波の果てに
  • 第1章 廃校を安置所に
  • 第2章 遺体搬送を命じられて
  • 第3章 歯という生きた証
  • 第4章 土葬か、火葬か
  • エピローグ 2ヶ月後に
  • 取材を終えて
  • 文庫版あとがき

 


『日本文化史 第二版』家永三郎著

『日本文化史』

日本の「文化」(本書では、「学問や芸術や宗教や思想・道徳などの領域を指す」狭義の「文化」)の歴史を概観した一冊。コンパクトながら日本史全体を俯瞰できる教科書的内容となっている。

初版は1959年(昭和34年)であり、第二版の出版は1981年(昭和56年)。初版から第二版までの間に22年、第二版から今日まで33年の経過がある。おそらく日本史研究の進展によりいささか古い記述もあるのだろうが、最新の状況については日本史教科書等により把握したうえで、本書により文化史の全体像を捉えるという使い方をするうえで、未だ他にかわる書物は少ないだろう。

文化史概説というテーマながら、所々に著者の歴史観が織り込まれている。特に、「歴史の進展というものは、政治権力の交代という形であらわれるときに、もっともはっきりしたすがたを示すのである。それに先だって、社会のもっと底のほうで歴史をおしすすめる力が徐々に蓄積され、だんだんそれが上の方に昇ってきて、ついに政治権力を変革するまでになる、という順序をとるのがふつうである。そして、いちばん歴史の奥底で歴史を推進する原動力となるものが、常に生産力をになう勤労民衆であるということは、今日ではもう常識といってよいであろう。」(p.113)という一節は、今の世に照らし合わせて見ても、その鋭い洞察に驚かされ、深く印象に残った。

『日本文化史 第二版』家永三郎著 岩波新書 1982年

目次
第二版はしがき
初版はしがき
はじめに—日本文化史の課題
1 原始社会の文化
 ・歴史の出発点
 ・原始社会とはどういう時代か
 ・縄文土器
 ・生産力の停滞
 ・呪術の支配
2 古代社会初期の文化
 ・金属文化の渡来
 ・階級と国家の成立
 ・君主制国家の形成
 ・民族宗教としての祭り
 ・『古事記』『日本書紀』の伝える物語
 ・古代文化と性
 ・日常生活
 ・造形美術
3 律令社会の文化
 ・律令機構の成立
 ・大陸精神文化の輸入
 ・飛鳥・白鳳・天平の仏教芸術
 ・伝統的芸術の新しい展望
 ・平安初期の文化
4 貴族社会の文化
 ・貴族社会の特色
 ・物語文芸の発達
 ・絵巻物の発達
 ・貴族文化の地方と海外への進出
 ・都会と農村の生活文化
5 封建社会成長期の文化
 ・武士の勃興とその歴史的意義
 ・武者の習の成立とその文芸的把握
 ・新仏教の成立
 ・理論的な著作の出現
 ・貴族文化の伝統
 ・荘園体制の解体と古代勢力の滅亡
 ・文化の下克上
 ・宗教の世俗化による新しい文化の発達
 ・室町時代の日常生活
6 封建社会確立期の文化
 ・武将と豪商の美術
 ・西洋文化との最初の接触
 ・封建秩序の固定と儒教道徳の思想界制覇
 ・学問の興隆と教育の普及
 ・町人芸術の発達
 ・元禄時代町人文化の特色
7 封建社会解体期の文化
 ・封建秩序の傾斜と町人芸術の爛熟
 ・科学的精神の誕生
 ・革新的な社会思想の展開
 ・文化の地域的および社会的な拡がり
日本文化史略年表・索引


『「空気」の研究』(山本七平著,文春文庫,1983年)

日本人の行動、発想を規制する独特な様式、「空気」。無意識的であっても我々を拘束しており、本書にて「水を差す」ような形で指摘されると、ハッと目を覚まされる。

本書の刊行は1983年。残念ながら、我々は今もなお同じような「空気」に支配されている。否、その「空気」の濃度は本書刊行時よりも濃くなっているのではないだろうか。

得たいの知れないこの規制を、我々は、直視し、超克できるのか。これができて初めて日本が進化したと言えるようになるのだろう。

 


『「空気」の研究』,山本七平著,文春文庫,1983年

■目次
「空気」の研究
「水=通常性」の研究
日本的根本主義(ファンダメンタリズム)について
あとがき


『法とは何か 新版』渡辺洋三著

法といってもいろいろある。家族の決まり、地域のルール、宗教上の制約、会社の規則、道徳。これらの法と法律との関係、欧米と日本における法の歴史的、文化的な差異、さまざまな法律上の問題点、こうした堅苦しい論点を堅苦しくなく全体を丁寧に俯瞰したのが本書である。著者の人権を中心とした指摘は、本書が刊行されて10年以上経過した現在においても重要である。

「法の精神とは、一言でいえば、正義である。」(p.8)。何が正義なのか、に対する一つの解はない。このことが法につきまとう永遠のジレンマなのだろう。

 


『法とは何か 新版』,渡辺洋三著,岩波新書,1998年

■目次
序章 国家の法と社会の法
1 法とは何か
 1-1 法の精神
 1-2 法と民主主義
 1-3 法とルール
 1-4 法と道徳
 1-5 法と手続
2 法の歴史的変動—欧米型と日本型
 2-1 欧米型
 2-2 日本型
3 現代日本の法システム
 3-1 近代法と現代法
 3-2 家族と法
 3-3 土地と法
 3-4 不法行為と法
 3-5 消費者の権利と企業
4 国家統治の法と国民の権利
 4-1 現代国家と行政権
 4-2 司法国家と行政国家
 4-3 日本の行政法の特質
 4-4 地方自治と地方分権
5 国家と人権
 5-1 労働者の人権
 5-2 社会保障・福祉の権利
 5-3 子どもの人権
6 法の解釈と裁判
 6-1 法の解釈とは
 6-2 裁判
7 国際法と国内法のはざまで
 7-1 国際的軍事秩序
 7-2 国際経済と人権
あとがき


『商店街再生の罠—売りたいモノから、顧客がしたいコトへ』 久繁哲之介著

課題の本質を見誤ったまま補助金等を制度化する自治体職員と、その補助金が麻薬のように商店街を蝕んでいるという批判、多くの地方において、いわゆる成功事例を表面的に模倣する愚行に対する批判、いずれも的を射た指摘である。

また、これからの商店街再生の鍵は人と人との交流機能であるとの指摘も非常に説得力があった。

著者が批判する「公務員」は、おそらく「自治体職員」、特に「市町村職員」を指しているものと理解され、小生も含めた市町村職員はその批判及び指摘を真摯に受け止めなければならない。また、これだけ大々的に批判されているということは、その地域の商店街再生のために当該自治体の職員が担うべき役割が小さくない、ということの裏返しと理解される。

再度、身近な顧客のニーズ把握に立ち返り、地元の方々が自然なかたちで交流できるような空間づくりをすることが、小さな町の商店街を再生させるために最も重要なことなのだろう。


『商店街再生の罠—売りたいモノから、顧客がしたいコトへ』,久繁哲之介著,ちくま新書,2013年

目次

  • はじめに
  • 第1章 レトロ商店街の罠
    • ケース1 観光地化に走り、地域密着を捨てた結果、地元客は大型店を選んだ 大分県豊後高田市レトロ商店街
    • ケース2 自動車優先で、人が歩けないレトロ商店街 大分県日田市豆田町商店街
    • ケース3 日曜は定休日で4割の店が閉まっているレトロ商店街 東京都江東区亀戸香取勝運商店街
  • 第2章 キャラクター商店街の罠
    • ケース4 本物の成功事例は、学びの宝庫 鳥取県境港市水木しげるロード
    • ケース5 テーマパーク商店街で一番になれないなら、地域一番店になる! 鳥取県北栄町コナン通り、東京都品川区戸越銀座商店街
  • 第3章 B級グルメ商店街の罠
    • ケース6 女性の感情に無関心なオヤジのデータ絶対主義の罠 富山県高岡市の商店街
    • ケース7 B-1グランプリの罠 愛媛県今治市の商店街、静岡県富士宮市の商店街
  • 第4章 商店街を利用しない公務員
    • ケース8 再生施策は「理論の美しさ」でなく「行動に繋げる」ことが重要 マイカー通勤ありきで「酒は飲まない、商店街に行かない」公務員
    • ケース9 役所仕事は、公開すると、市民感覚に変わる 実録「千葉県商店街あり方検討会」委員会
  • 第5章 意欲が低い商店主
    • ケース10 意欲が低い商店主も救済する護送船団方式支援はやめよう 実録「顧客インタビュー、商店主対象の講演会」
    • ケース11 金融商品と化した商店街に、自治体は課税とテナント管理を 太田市南口一番街、鹿児島市天文館
  • 第6章 再生戦略1「シェア」で、雇用・起業を創出
    • ケース12 女性4人の異業種な起業家が相互に貢献しあう協働経営 東京都深川資料館通り商店街
  • 第7章 再生戦略2「地域経済循環率」を高めて、第一次産業と共生
    • ケース13 地域再生の鍵は売上額でなく「地域経済循環率」 愛媛県宇和島市の地域体感カフェ五感
  • 第8章 再生戦略3 趣味を媒介に「地域コミュニティ」を育成
    • ケース14 自分のコトと顧客が感じるガーデニング 福岡県久留米ほとめき通り商店街
    • ケース15 本を媒介に、老若男女が交流できる場「サードプレイス」を創る 千葉銀座商店街、袖ケ浦団地商店街
  • 参考書籍
  • おわりに

参考

地域再生プランナー『久繁哲之介の地域力向上塾』