ちくま新書一覧

今井照(2017)『地方自治講義』ちくま新書

ざっくりとまとめ

  • 主題
    • 「地方自治」の概念が人によって異なっていて、「地方自治」を進めているつもりが、実は中央集権化を進めることになってしまい、地域が弱体化してしまう。そういう事態を防ぐためにも、「地方自治」の基礎概念や歴史を知ることが重要。
  • 第1講 自治体には三つの顔がある

    「1 土地の区分としての自治体
    2 地域社会としての自治体
    3 地域の政治・行政組織としての自治体」(p.14)

    • 本書における「自治体」は、主として3。
  • 第2講 地方自治の原理と歴史
    • 地方自治の原理は、補完性原理。
    • 個人で解決できない問題を地域で、地域で解決できない問題を自治体で、自治体で解決できない問題を都道府県で、都道府県で解決できない問題を国で、というように補完する。これが基本的な考え方。
    • 平成の大合併に至るまで、分権の名のもとに少しずつ中央集権的になってきている。
  • 第3講 公共政策と行政改革

    「政策のなかでも社会問題の解決に関わる政策を公共政策と呼び、公共政策の中でも国や自治体などの政府が担うものを政府政策と言います」(p.103)

    • 行政改革として公務員が現象する一方、委託等で公務をになう民間人(「公務員もどき」)が増加。
  • 第4講 地域社会と市民参加
    • 地縁団体を万能とみるのは誤り。
    • 制度化された議会という仕組みをもっと活かすべき。
  • 第5講 憲法と地方自治
    • 「地方自治の本旨」という言葉の定義が不明確。
    • 不明確だから不適当とするのではなく、定義を新たに作り上げていくことが可能である、と捉えるべき。
  • 第6講 縮小社会の中の自治体
    • 人口減少下においても守るべき自治体の役割があるはず。
    • ときに政策的に勝負に出る場面はあるにしても、その勝負の結果、住民に致命的なダメージを与えるものであってはならない。

目次

  • はじめに
  • 第1講 自治体には三つの顔がある
    • 1 自治体のアクター(登場人物)
    • 2 住民と市民
    • 3 二元的代表制
  • 第2講 地方自治の原理と歴史
    • 1 自治体の考え方
    • 2 自治体の歴史
    • 3 文献改革と平成の大合併
  • 第3講 公共政策と行政改革
    • 1 自治体の公共政策
    • 2 自治体財政の基礎
    • 3 公務員
  • 第4講 地域社会と市民参加
    • 1 コミュニティ
    • 2 市民合意
    • 3 市民参加
  • 第5講 憲法と地方自治
    • 1 主語は誰か
    • 2 地方自治の本旨
    • 3 欺きの話法
  • 第6講 縮小社会の中の自治体
    • 1 人口減少の要因
    • 2 東京圏人工の固定化
    • 3 拡散政策が導く一極集中
  • おわりに
  • 参照文献

梅田望夫(2006)『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』ちくま新書

初版から10年以上経過してもなお陳腐化しておらず刺激を受けるところが多かったです。

以下、印象に残った点。

「日本の場合、インフラは世界一になったが、インターネットは善悪でいえば「悪」、清濁では「濁」、可能性よりは危険の方にばかり目を向ける。良くも悪くもネットをネットたらしめている「開放性」を著しく限定する形で、リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする」(p.21)

著者が米国との比較で述べたもの。この傾向は、(少しはましになっただろうが)今でもさほど変わらず。

 

(Google内のアイデアマンの評価について)

「アイデアの起案自身と言うのはほとんど評価されない。アイデアっていうのは当然、難しい問題を含むものだ。その問題を解決して、動く形にして初めて評価される。口だけの人はダメだな」(p.87-88)

「あれは俺の発案なんだ」とか言いそうな「いっちょかみ」な人がだめなのは日本でも同じ。

「半導体に飛びついて電子立国・日本を達成し、PCにも飛びつき巨大なPC関連産業を日本にもたらしたのに、なぜインターネットには飛びつけなかったのか?」(p.92)

具体的な物には強い日本。物の見えないインターネットは不向き、ということか。いずれインターネットの向こう側にも日本初の巨大世界がつくられることを期待。

「全く新しい事象を前にして、いくつになっても前向きにそれを面白がり、積極的に未来志向で考え、何か挑戦したいと思う若い世代を明るく励ます。それがシリコンバレーの「大人の流儀」たるオプティミズムである。」(p.246)

ITに限らずあらゆる分野で求められる姿勢。特に日本の地域、特に高齢者にはこういう姿勢が重要なのでは。

 

目次

  • 序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
  • 第1章 「革命」であることの真の意味
  • 第2章 グーグル―知の世界を再編成する
  • 第3章 ロングテールとWeb2.0
  • 第4章 ブログと総表現社会
  • 第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
  • 第6章 ウェブ進化は世代交代によって
  • 終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
  • 初出について
  • あとがき

 

 


瀬川拓郎(2016)『アイヌと縄文—もうひとつの日本の歴史』ちくま新書

縄文文化を受け継いだアイヌ。縄文文化は、弥生文化に飲み込まれてしまいすでになくなっている、というのは誤りで、脈々と我々の深層で生き続けている。

前に読んだ『マタギ 矛盾なき労働と食文化』(田中康弘著)とも内容がつながっているように思われた。

 

 

 

  • 目次
    • はじめに
    • 第1章 アイヌの原郷—縄文時代
      • 1 アイヌと縄文文化
      • 2 アイヌと縄文人
      • 3 アイヌと縄文語
    • 第2章 流動化する世界—続縄文時代(弥生・古墳時代)
      • 1 弥生文化の北上と揺れ動く社会
      • 2 古墳社会との交流
      • 3 オホーツク人の侵入と王権の介入
    • 第3章 商品化する世界—擦文時代(奈良・平安時代)
      • 1 本州からの移民
      • 2 交易民としての成長
      • 3 同化されるオホーツク人
    • 第4章 グローバル化する世界—ニブタニ時代(鎌倉時代以降)
      • 1 多様化するアイヌの世界
      • 2 チャシをめぐる日本と大陸
      • 3 ミイラと儒教
    • 第5章 アイヌの縄文思想
      • 1 なぜ中立地帯なのか
      • 2 なぜ聖域で獣を解体するのか
    • おわりに
    • 引用文献

 

 


山下祐介著『地方消滅の罠—「増田レポート」と人口減少社会の正体』

いわゆる「増田レポート」が過剰な受け止め方をなされることにより地域の諦めを誘発し、本来消滅を免れることが可能な地域までもを消滅に導く恐れがある。そうした危険性を土台として「増田レポート」の示す方向性、施策のあり方を批判した書。

国、地方ともに人口減少問題対策について政策・施策の優先順位を上げざるを得ない状況を創りだした点、「増田レポート」の意義は大きいものと考えるが、一方で著者が言うような世論の熱狂的な反応や消滅すると名指しされた地方の諦観誘発が、地方消滅を加速させてしまうという指摘も頷ける。特に相変わらずの経済成長重視の方針に対する疑義は強く共感を覚えた。

 

山下祐介(2014)『地方消滅の罠—「増田レポート」と人口減少社会の正体』ちくま新書

  • 目次
    • 序章 地方消滅ショック
    • 第1章 人口減少はなぜ起きるのか
      • 1 人口のつくられ方
      • 2 暮らしの側から出生数低下の原因を探る
      • 3 不安の悪循環が始まっている
    • 第2章 地方消滅へと導くのは誰か
      • 1 象徴としての学校統廃合問題
      • 2 新たな地域開発の素顔
      • 3 インフラの撤退が地域崩壊を導く
      • 4 この路線は変えられないのか
    • 第3章 「選択と集中」論の危うさ
      • 1 増田レポートが目指すもの
      • 2 選択がもたらす排除の論理
      • 3 本来、選択すべきものは何か
      • 4 グローバル化の中で
    • 第4章 多様なものの共生へ
      • 1 何と何の対立なのか
      • 2 現状認識と方向性—依存と自立、排除と包摂
      • 3 つくるべき多様な問題解決回路—上意下達と共同・協働
      • 4 社会実験モデル事業による問題解決への試行錯誤
      • 5 自治を通じて問題に真摯に向きあう
    • 第5章 「ふるさと回帰」は再生の切り札になるか
      • 1 人口減少への自治体対応を振り返る
      • 2 様々なふるさと回帰
      • 3 UJIターン論をめぐって
      • 4 複数地域所属という新しい姿
    • 第6章 持続する制度を生み出す
      • 1 多様性を認め合う新しいゲームの創生へ
      • 2 住民とは誰か—成長・発展から循環・持続の住民政策へ
      • 3 「第二の住民」でできること
      • 4 「財が財を呼ぶ」から、「生きているもの」の論理へ
    • 終章 新しい社会を選べるか

 

  • 引用文献
    • 今井照(2014)『自治体再建—原発避難と「移動する村」』ちくま新書
    • 大野晃(2005)『山村環境社会学序説—現代山村の限界集落化と流域共同管理』農文協
    • 岡田知弘(2014)「さらなる「選択と集中」は地方都市の衰退を加速させる—増田レポート「地方拠点都市」論批判」『世界』2014年10月号,岩波書店
    • 岡田真(1976)『人口Uターンと日本の社会』大明堂
    • 小田切徳美(2014)「「農村たたみ」に抗する田園回帰」『世界』2014年9月号,岩波書店
    • 片山善博(2014)「自治を蝕む「ふるさと納税」「増田レポート」批判」『世界』2014年10月号,岩波書店
    • 徳野貞雄・柏尾珠紀(2014)『家族・集落・女性の底力—限界集落論を超えて』農文協
    • 坂本誠(2014)「「人口減少社会」の罠」『世界』2014年10月号,岩波書店
    • 佐々木誠造(2013)『まちづくり人づくり意識づくり—佐々木誠造に聞く「都市経営」』泰斗舎
    • 内閣府(2014)『平成26年版少子化社会対策白書』
    • 日本学術会議・社会学委員会東日本大震災の被害構造と日本社会の再建の道を探る分科会(2014)「東日本大震災からの復興政策の改善についての提言」
    • 日本学術会議・東日本大震災復興支援委員会福島復興支援分科会(2014)「東京電力福島第一原子力発電所事故による長期避難者の暮らしと住まいの再建に関する提言」
    • 舩橋晴俊・長谷川公一・畠中宗一・梶田孝道(1988)『高速文明の地域問題—東北新幹線の建設・紛争と社会的影響』有斐閣選書
    • 牧瀬稔・中西規之編著(2009)『人口減少時代における地域政策のヒント』東京法令出版
    • 増田寛也編著(2014)『地方消滅—東京一極集中が招く人口急減』中公新書
    • 山下祐介(2011)「新砂子瀬物語」『白神学』第1巻,ブナの里白神公社
    • 山下祐介(2012)『限界集落の真実—過疎の村は消えるか?』ちくま新書
    • 山下祐介(2013)『東北発の震災論—周辺から広域システムを考える』ちくま新書
    • 山下祐介・市村高志・佐藤彰彦(2013)『人間なき復興—原発避難と国民の「不理解」をめぐって』明石書店
    • 山田昌弘(1999)『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書
    • 山本努(2013)『人口還流(Uターン)と過疎農山村の社会学』学文社