菊池俊彦一覧

菊池俊彦(2009)『オホーツクの古代史』平凡社新書

中国の史料に登場する流鬼や夜叉。流鬼や夜叉がどこにあり、どのような人々だったのか、ということについて永年の議論があるが、本書において著者は、

流鬼はサハリンのオホーツク文化の人たちであり、夜叉はオホーツク海北岸の古コリャーク文化の人たちだった、と私は考えている。そして流鬼はニヴフ民族に相当し、夜叉はコリャーク民族に相当すると考えることができる。(p.12)

と主張し、環オホーツク海の諸民族の古代史を丁寧に解説する。

印象的だったのが、『元史』に登場する骨嵬(こつがい)についての以下の箇所。

ここで骨嵬と書かれているのは、ギリャーク(ニヴフ)民族がアイヌ民族をクギとよぶ発音の漢字表記であるから、骨嵬は明らかにアイヌ民族を指している。骨嵬という表記はその後、明朝では苦兀(くごつ)あるいは苦夷(くい)と書かれている。これはアムール河下流域のツングース民族がアイヌ民族をクイとよぶ発音に対応している。(p.169-170)

骨嵬(くぎ)→苦兀(くごつ)・苦夷(くい)、この流れで蝦夷(かい)と日本で表記されるようになったのだろうか?

目次

  • はじめに
  • 第一章 流鬼国の朝貢使節
    • 流鬼国はカムチャツカ半島か、サハリンか
    • 「北海」はバイカル湖か
    • 一万五千里の彼方にある国
    • 黒水靺鞨の領域
    • 「少海」は「小海」
    • 流鬼の使節の名前
    • 使節の長安到着
    • 「三訳」とは何か
    • 騎都尉という称号
  • 第二章 流鬼国はどこにあったのか
    • 何秋濤のカムチャツカ半島説
    • シュレーヘルの流鬼伝の翻訳
    • ロシアのカムチャツカ進出
    • 白鳥庫吉のサハリン説
    • 流鬼=アイヌ民族説
    • 唐代のギリャーク民族とアイヌ民族の居住地
    • 和田清のカムチャツカ半島説
    • 夜叉の解釈をめぐって
    • 夜叉=エスキモー民族説
    • カムチャツカ半島の考古学資料
  • 第三章 オホーツク文化の大陸起源説
    • オホーツク文化とエスキモー
    • オホーツク文化という名称
    • オホーツク文化と大陸
    • モヨロ貝塚の発掘
    • 東亜考古学会主導のモヨロ貝塚の発掘
    • オホーツク式土器の類例
    • ホロンバイルの土器
    • アリュート民族渡来説
    • オホーツク文化の人たちの大陸からの渡来説
    • 粛慎(しゅくしん)と粛慎(みしはせ)
  • 第四章 オホーツク文化と流鬼
    • サハリンの遺跡調査
    • アムール河中流域の遺跡調査
    • オホーツク海北岸の遺跡調査
    • オホーツク文化の遺跡調査
    • 大陸側の考古学資料の引用
    • エスキモー民族渡来説
    • ウリチ民族説渡来説
    • 黒水靺鞨渡来説
    • オホーツク文化の靺鞨系遺物
    • オホーツク文化=ギリャーク民族説
    • 流鬼国=サハリン=オホーツク文化
    • ホロンバイルのブルホトゥイ文化
  • 第五章 夜叉国と環オホーツク海交易
    • オホーツク海北岸の古コリャーク文化
    • 皇宋通宝の発見
    • オホーツク海北岸のトカレフ文化
    • オホーツク海北西岸の初期鉄器時代の遺跡
    • カムチャツカ半島東岸のタリヤ文化
    • 環オホーツク海の諸民族
    • アイヌ民族のサハリン進出
    • 再びオホーツク文化の人たち=粛慎説
    • 流鬼国の朝貢使節の貢物
    • 中国に運ばれたセイウチの牙
    • オホーツク文化のセイウチの牙製品
    • オホーツク海北岸のセイウチの牙
    • 夜叉国へ至る道
  • あとがき
  • 主要参考文献
  • 挿図出典一覧

その他